議員をめざす A to Z  (その3)

議員をめざすA to Z (その3)

○選挙本番までに何をやるか
  


M.選挙を通じて特に重視することは、選挙戦とは宣伝戦だということです。どれだけわかり易く、どれだけ印象深く、どれだけ説得力のある宣伝ができるかです。そしてそれが、投票行動に結びつかなければ、いくら話題になり面白がられても駄目です。好感をもたれる位では、ダメダメです。なぜか。

 前にも書いた話ですが、もう一度念を押します。小選挙区制や、首長選などは定数が1人で候補者も数人です。ですから違いが比較的はっきりしているし、有権者も大体この人と決めやすいものです。しかし区(市・町・村)議会議員の場合は違います。たくさん出ることに加えて、様々なルートで、お願いや働きかけがなされるわけです。しかも1人の人にとって数人ぐらいは好感の持てる、あるいは人情やしがらみで検討せざるを得ない人がいるわけです。意中の候補が数人いる中で、NO.1にならなければならないのです。あの人は2番目に良いんだけど、では票にならないわけです。これがおそらく、これまで市民派といわれた人が苦戦した原因だと思います。

 おまけに市民派の選挙は詰めが甘いというのが定説です。つまり票読みが出来ない、あるいはしない人さえいます。私の知り合いで、福祉作業所をいくつも作った、福祉のエキスパートも言うべき人がいました。当然のように回りから要請され、自分も議会に入って頑張りたいと思い立候補しました。励ます会には300人も集まり、当選は確実に見えました。

 私もすっかり安心してあまり応援に行きませんでした。ところが、8票差で落ちたのです。あとで周りの人が悔しがって、投票に行かなかった人だけで8人なんか超えたのにと言っていましたが、その人はそれで、4年間浪人したわけです。選挙ってそういうものです。

 だから、選挙には縁がないと思うのか、きちんとやれば十分太刀打ちできると見るのかは、それぞれの考え方です。私は、そこで選挙には技術の部分があると言いたいのです。票読みのできる選挙がポイントです。どうやるかは後で。

 もう一つ、特に候補予定者に肝に銘じて欲しいのは、選挙は候補者によって左右される面が大きいということです。さりとて、候補者が良いからそれでOKというわけではありません。それを支える多くの人の協力、それに何よりも共感する一票一票がないことには話しになりません。そこで、「当選したらみんなのおかげ、落選したら自分のせい」 これを、忘れないで欲しいのです。特に市民派の選挙といわれるところでは、この覚悟がないばかりに、折角できたネットワークが選挙が終わるたびに四分五裂という憂き目を見ています。

心したいものです。


N.選挙間近になったときに選挙管理委員会の説明会があります。1ヶ月以上前から早いところでは、2ヶ月ぐらい前でしょう。そのときに、事前審査の話が出ます。というよりも事前審査の話が中心です。ですから出席する人は、立候補を予定している人か、その代理人ということになります。たいていは代理人が出席しますが、はっきり決めていなくて、どんな様子か知りたいと思っていくと、選管の人からしつこく詮索されたりします。この辺も普通の市民にとっては選挙がなんとなく敷居の高いものに感じる原因になるのでしょう。

堂々としていることです。立候補は市民の権利であり、わからないことがあれば、担当者に聞けばいいだけのことです。こういうところで、事情通選挙通をひけらかして得意になっている人もいますが、滑稽なだけです。

 立候補の届出書類は、事前審査を経て、告示日まえには全てが整っていなければなりません。そうでなければ、朝9時からの受付で、数十人が押しかけるわけですから、とても一日では手続きが終わらないことになります。それでも最後のころの受付は昼過ぎになったりします。これは選挙カーも同じです。特にこの選挙カーについては警察署の担当なので、場所が違うことがありますので、注意が必要です。親切な警察署では、役所に出張して審査してくれる場合もありますが、手続きは事前に済んでいることが原則です。

ちなみに、選挙公報も版下で提出しておく必要があります。選挙の告示日は、終盤戦という話もこれらを考えるとむべなるかなという感じがします。

 書類の準備は、具体的にはこの事前説明会以降ということになりますが、公報の版下作りなどは、アイディアの詰めや、政策作りなど、早くから数人のプロジェクトチームを作って進めたら良いでしょう。その場合にできればコピーライトのできる人やデザインのできる人、イラストの書ける人、そしてもちろん政策に強い人が入っていることが大切です。それにもう一つ。選挙ハガキの製作があります。事前ポスターの製作は、貼っても告示日当日までにははがすように言われます。せっかく貼ってもあまり効果はないし、はがす手間も考えたら、市民派の場合は考えなくても良いでしょう。いわゆる玄人筋には、あいつが今度は立つのかといった、意思表示にはなるでしょうがね。

選挙期間中の場合のポスターは準備しておいても良いのですが、これは選挙期間にしか使いませんので、急がなくても結構です。でも今度は統一地方選なので、準備は早いに越したことはありません。それと写真ですが、選挙は4月に行われることをお忘れなく。服装も季節を考えないとちぐはぐなものになりかねません。真冬に水着ほどの差はありませんけどね。いずれにしても間近になると、とかくバタバタしがちなので、出来る準備は早めにしましょう。

ただ、選挙ハガキは、前にも書いたように、名刺代わりあるいは候補者紹介のリーフレット代わりにも使えますので、遅くとも3ヶ月前には完成しておきたいものです。出来れば年内にでも。

選挙はがきは、表半分に選挙期日や連絡先略歴などを入れ、裏は候補者の写真、政策、推薦人、その他候補者をアピールする効果のあるものにする必要があります。もちろん、控えとしてとって置けるように、はがきサイズよりも縦5~7センチは長めに作ることを忘れないように。切り取り線も入れます。これは先に書いたように、選挙期間中に使う紹介はがきですが、事前に支持者の皆さんに配布して書いて貰う必要がありますので、かなり時期を問わず幅広く使うことができます。極端に言えば、広くバラ撒いて、そこから帰ってきたものから、実際に出す2,000枚を選ぶということができるわけです。ここのところの意味は、お分かりですね。

 気をつけなければならないのは、決して直接ポストに入れたり郵便局に持っていってはいけないということです。これを徹底しておかなければなりません。必ず一度事務所なり連絡場所に集約しなければなりません。これの周知を徹底する為に、必ずハガキと一緒にハガキについてのお願いと説明の文書をつける必要があります。というよりもつけたほうが無差別にハガキを配っているわけではないことがアピールできるので、却っていいのです。これもお分かりですよね。


O.肝心の選挙費用について、まだでした。まず必要なのは、供託金です。区(市)議会議員の場合、30万円。これだけは参加するために必要です。ただし、供託物没収点をクリアすれば、返却されます。なお、公営選挙の適用基準もこの供託物没収点です。これは、総投票数を、定数×10で割ることによって得られます。つまり、ごく単純に言えば、10万人の都市で、有権者数7万人、議員定数30人ならば、投票率60%の場合、供託物没収点は42,000÷300=140票です。140票とれば、供託金は戻ってくるし、公費助成も受けられるということです。

ごくごく普通の選挙をやろうと思えば、これに人件費などをあわせれば、400万円はかかることになってしまいます。それに生活費です。これまた切りがありません。

しかし私たちは市民派です。事前ポスターなし。パンフレットをもっと安く。郵送費最低限で、事前にかける費用を40万円に抑えます。事務所は高すぎる場合は無しでも良いので、50万円以下に抑えます。電話作戦は、5,000本は最低必要なので、50万円。人件費などはすべてボランティアか、なければ一人ででもやります。つまり140万円で、一通りの選挙戦は可能です。事務所をあきらめれば、100万円以内で、立派に勝つ選挙ができます。
これ以外に、選挙カーの設備やデコレートする費用などがありますが、それを込みにしても、100万円から多くて150万円以内に抑えたいものです。

これでもし負けたとしても、供託物没収点さえクリアすれば、150万円以下の負担で済むわけです。市民派の場合は、一口千円のカンパを募り、経理を公開すれば、カンパを集める行動が、票を集める行動になり、このケースでの当落線は、1,000~1,200票と考えられますので、それだけでも当選圏内に入るでしょう。なお、カンパは政治団体への寄付として集めなければなりません。百円カンパもアイディアですが、お金はあまり集まりませんね。

こうしてみると、市民派の選挙が、最低でも500万円、多くの人は1千万円以上も使う選挙に比べて、しがらみが少ないのは自明ですね。こういう選挙で議員になれば、議員職に執着することもなく、また後継者も作りやすく、本当の意味での市民派として、市民の声を市政に反映させることができるようになるでしょう。やりがいもあると思いませんか。

P.
電話掛けマニュアル  事前のアプローチ編

いまの時期の電話掛けは、候補予定者の知名度の調査と、好感を持ってこちらの主張を聞いてくれる人を探すためのものです。したがって投票依頼や立候補を断定的に言うことは禁物です。

「応援してください」「ご検討ください」はOKですが「大事な一票をお願いします」や「入れてください」はNGです。
電話は時として迷惑に感じるときもあります。できるだけ相手の気持ちになって、しかし確信を持って掛けるようにします。すばらしい情報を伝えるんだという気持ちです。こちらの態度や気分は相手に微妙な形で伝わってしまうものと考えましょう。明るく・ソフトに・元気良くです。冗談のひとつも言って、相手がクスッとでもしたらしめたもので、そこからぐっと会話しやすくなります。要は気持ちが通じ合うことです。

電話を掛けると、まずは、留守か留守番電話が多いようです。留守番電話の場合、紹介者のある場合は「△△さんのご紹介でお電話しました」「留守番電話で失礼ですが、こちらは、市議会予定候補の○○○○の事務所です。(ボランティアの××です)四月には、□□市議選が予定されています。○○○○は市議選に挑戦する予定で準備しているんですが、市民派として、しがらみのない立場で、開かれた市政を皆さんと一緒に作っていきたいと考えています。ご意見をお聞かせください。電話は、123-4567です。またお電話します。よろしくお願いします」という具合です。内容はあなたのスタンスで、いかようにも変えてください。正解はありません。
紹介者がいない場合も同様です。

本人がいた場合は「市議会議員○○○○の事務所です(ボランティアの××です)」とできれば名前を言います。家人の場合は、有権者かどうかを確かめ、有権者なら、「ちょっとお時間よろしいですか」と断りアプローチします。

「四月に市議会の選挙がありますが、ご存知ですか?」
知らないと答えた人には、「4月20日から選挙運動期間で、27日が投票日なんです」と紹介します。知っている人には「すでにもうどなたかお決めになっていらっしゃいますか?」とさらっと聞きます。ここであまり口調を重くすると相手は身構えてしまいます。

決めているといったら「○○○○は、市民派としてがんばっています。しがらみのない立場で、開かれた市政を皆さんと一緒に作っていきたいと考えています。市政を変えるためがんばりたいので、○○○○をポスターや街頭で見かけたらご注目ください」とあまり深追いしないで、好印象を残して切るようにして下さい。評価は当然Eです。

ここで、ABCDEの5段階評価ですが、Aは広がりのある票です。その人だけではなく、家族とか友人知人に広がる支持者ということです。
Bは確実な一票です。Cは好意的な反応です。資料を検討してくれそうな、応援してくれそうな、だけどまだ決めていない人です。

Dは興味がなさそうな、明らかに嫌そうな、どうでもいいよという態度が明らかな人です。この人たちは非常に難しいです。本当はよく知ってくれさえすれば支持者になるのかもしれませんが、何せ時間がないのです。今回はあきらめざるを得ないでしょう。

Eはもうすでに決めている人です。組織されている人です。この人たちもそれぞれに考えを持ってそうしているわけですから、何も喧嘩をする必要はありません。それにいつ考えが変わるかもわかりませんから、正直に教えてくれてありがとうという気持ちで、いいのです。
さて一番大事なのは、実はCの人たちです。Cをできるだけたくさん集めて、本番に備えましょう。

話を戻します。

決めていないといったら「○○○○は、市議選を目指して準備しているんですが、○○○○のことはご存知ですか?」と聞きます。この質問は選挙を知らないと答えた人にも聞きます。

知らないと答えた人には「○○○○は、しがらみのない立場で、開かれた市政を皆さんと一緒に作っていきたいと考えています。市政を変えるため、市民派としてがんばっています。私もボランティアで応援しているんですよ。○○○○の資料をお送りしますので、一度ご検討いただけませんか」とお願いします。

「いいですよ」といってくれたら、名前と住所を確認します。評価はC。資料送付を絶対に忘れないこと。信用を失い、一票を失います。

「いらない」といったら「○○○○は、しがらみのない立場で、開かれた市政を皆さんと一緒に作っていきたいと考えています。市民派としてがんばっています。市政を変えるためがんばりたいので、ポスターや街頭などで見かけたらご注目ください。選挙が近くなったら、またお電話させていただきます」といって切ります。そのときの反応で、CかDと判断します。判断の目安は、迷惑がっていないかどうかです。そのために「またお電話してよろしいですか?」という聞き方をしたほうがいいかもしれません。

○○○○を知っていると答えた方には、「なにかご意見は」と聞き、相手の意見を引き出すようにします。無所属で、お金や人手もあまりないことや、市民派として政治参加や情報公開が大切だと思っていることなど、相手の問題意識が浮き彫りになるような話題を振ってみて、できれば支持をさらに広げていただけるようお願いします。最終的には、「有り難うございます。今後ともよろしくお願いします」で締めます。

以上簡単に、流れを追ってみました。要は相手の反応をどう引き出すかです。「がんばってください」や「ごくろうさま」「はい、はい、はい」で撃退されたのでは話になりません。「応援してます」といわれたら、「ありがとうございます」とお礼を言ってから、具体的にどう応援してくれるのかと食い下がらなければなりません。「事務所に一度来ていただけませんか」とお願いして、有力な支援者になっていただいた例もあります。世間話ができたり、相手の意見や要望が出たらかなりの確率で、票に結びつきます。その一票一票こそが大事なのです。

電話をかけたら必ず集計し、どのくらい票が確実になったか評価しなければなりません。いわゆる票読みです。市民派は、これができないあるいは下手なために、苦汁を飲む羽目になるのがとても多いのです。

何度も言っているように、市民派には確固たる支持基盤があるのです。ただそれは組織されていないし、組織されるのを嫌う層でもあります。普段は棄権することが多い層です。だからこそきちんとアプローチすることが効果的でもあり、必要なのです。電話はそのための、最高の手段といえます。インターネットやメールの威力はこれから出てくるでしょう。今は電話に勝るものはありません。

Q.電話掛けは選挙違反か


最近、ニュースなどでよく見聞きする選挙違反が、電話に関することなのは、皆さんよくご存知だと思います。あの場合は、選挙運動に、有償の人を使ったというところに問題があるのです。宮城の民主党の二人に関しては、ある会社に業務委託までしていたということで、まったく無警戒だったようです。

もちろんボランティアである限りは、電話に関しては、選挙違反の懼れはまったくありません。ただ、この時期では後援会活動という政治活動に限られますので、投票を依頼することは、NGです。つまり「一票入れて下さい」または「投票して下さい」とは言えないのです。

「支持していただけますか?」とか「応援していただけますか?」と聞かなければなりません。いずれにしても相手の反応を聞くのが大事なので、「お願いします」と言い切ってはいけません。必ず「お願いできますか?」と聞きます。
もちろん告示後の選挙活動のときは違います。「○○と書いていただけますか」とまで聞くのです。本番についてはまた後で。

事前も含めて、選挙違反で最も気をつけなければならないのは、お金、特に酒食に関することです。絶対に奢ってはいけません。必ず割り勘で。

日常的にはお土産やお中元お歳暮、お祝いやお悔やみなど、お金が交際の上で大きな役割を果たします。気持ちをあらわす上で、大事な役目を果たします。だ・か・ら、と言ったほうがいいでしょう。買収供応というのは、当選を無にする連座制の強化によって、致命的なものになりえるのです。

特に、本人はもちろん、選挙に積極的に関わっている人は、その役職等に関わらず、注意しなければなりません。実態がどうであるかがポイントだからです。

幸いにも市民派はお金が無いので、ほとんど心配するようなことはありません。文書違反などは、必ず選管から警告がありますので、ほとんど立件されるようなことはありませんし、連座するようなことも、ほぼ無いといっていいでしょう。

違反については、選管によっても扱いがだいぶ違いますので、聞いてみるのもひとつの方法です。ただ、グレーゾーンは大体駄目といわれることが多いです。やっぱりお役所、お役人ですよね。



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